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今だからこそ残したい ハガキの文化

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みなさん、こんばんは。

愛原 夢音です♪

 

今回は、SUNDAY'S POSTから。

 

教育学者の齋藤孝さんをゲストに、手紙やはがきの文化について

伺いました。

 

 

 

まず、齋藤孝さんについて簡単にプロフィールをご紹介します。

 

齋藤孝さんは静岡県生まれ。

 

東京大学法学部を卒業後、

東京大学大学院教育学研究科博士課程を経て

現在は明治大学文学部の教授を務めています。

 

「声に出して読みたい日本語」や「雑談力が上がる話し方」などの

ベストセラーを始め、多くの本を出版されています。

 

私も、齋藤孝さんの本の読者の1人ですが

とてもわかりやすくて教養が身につくので、オススメです!

 

 

はがきの名文コンクールとは?

 

 

さて話は変わりますが、みなさん、

 

はがきの名文コンクール」というものが

あるのをご存知ですか?

 

私同様、「初めて知った!」という方も

いらっしゃるのではないでしょうか?

 

 

「はがきの名文コンクール」とは、

はがきに20字以上200字以内で「願いごと」を書いて

応募するコンクールのことです。

 

今年で6度目を迎える、このコンクール。

齋藤孝さんが選考委員を務めています

 

第1回から第5回まで、このコンクールの選考に

携わっていたそうです。

 

選考委員には作家の五木寛之さん、村山由香さんといった

そうそうたるメンバーの名前も…。

 

大賞は1名、賞金100万円が贈られます。

佳作には10名が選ばれ、賞金は10万円。

 

さらに、日本郵便賞として10名が選ばれ

ふるさと小包が毎月1回、1年間贈呈されるという、

他のコンクールにはない特典もありますよ!

 

その他にもいろいろな賞があるので、

是非「はがきの名文コンクール」のホームページを

チェックしてみてください!

 

※既に締め切りとなっているので、ご了承ください。

 

 

はがきの名文コンクールの詳細は、こちら↓

はがきの名文コンクール2020

 

 

200文字以内と文字数としては多くないので、

応募はしやすく非常に書きやすいですよね。

 

 

異なる感性で選んだものはなかなか一致しない

 

コンクールからの応募作品をどのようにして選定していくのか。

 

その方法は、まず選考委員それぞれが下読みを行います

 

佳作にしたいものや大賞に押したいものなどの候補作品を

持ち寄った上で、それらの番号をホワイトボードに

書いていき、2人、3人が重なったものを優先的に選んでいきます。

 

しかし…1つだけ問題があります。

 

それは…

 

 

 

重なるものが少ない!

 

 

ということです。

 

 

それぞれの好みもそうですが、感性・心の琴線が

震えるところが全く違うのだと、齋藤孝さんはいいます。

 

 

齋藤孝さんの場合は、

 

  • 戦争のときの話
  • 障害を持って子供を育てた話

 

などに反応してしまいがちなのだとか。

 

この「ハガキの名文コンクール」をはじめた堺屋太一さんは、

子供の声というものをとても大切にしていたそうです。

 

 

願いごとは誰のために?

 

「はがきの名文コンクール」では、

毎年どのくらいの応募があるのでしょうか?

 

SNSや携帯電話の普及・発達によって、

はがきを書くという人もめっきり減ったように思います。

 

そんな中、どれほどの応募があるのか。

みなさんは、どう思いますか?

 

 

正解は…

 

 

前回の第5回目は、2万7千通もの応募がありました。

多いときには、4万通近くの応募があることも…!

 

それだけの応募があること自体驚きですが…

 

SNSや携帯電話ですぐに連絡が取れるようになった現代

 

それでも、アナログな手紙やハガキといった通信手段は

なくなることがないのかもしれません

 

文明の利器は確かに便利ですが、感情や思いが

ダイレクトに伝わらないという欠点があります。

 

でも、手紙やはがきにはその人の性格や思い、

感情が文字からでも読み取ることができます

 

それが、アナログな通信手段が今もなお

多くの支持を誇っている理由なのかもしれません。

 

特に、このコンクールに関しては…

 

テーマが「願いごと」ということもあって、

多くの作品が殺到するのではないかと思います。

 

それほど、「願いごと」に対する強い思いを持っている人が

たくさんいることの証なのではないかと思うのです。

 

 

読めば読むほど味が出る?

 

 

多いときには7万通ものハガキが送られてくるという、

「ハガキの名文コンクール」。

 

これだけの応募作の中から大賞を決めるというのは、

簡単なことではありません。

 

「簡単に言うと、どれも良い作品。 

 

 短いけど、グッとくる。そんな作品が多い中で

 どれか1通を決めるというのは、なかなか難しい」。

 

そう、齋藤孝さんは話します。

 

 

しかし、何回も読んでいると…

 

「あ、やっぱり、これがいい」と、

 

だんだん味が出てくるものがあるそうです。

 

 

ハガキの文化を、後世に

 

 

第1回の大賞というのは、印象に残っていると話す

齋藤孝さん。

 

第1回のときというのは、どうやったらいいのか

はっきりとわからない、いわゆる手探りの状態でした。

 

このコンクールをはじめられた堺屋太一さんには、

ある強い思いがありました。

 

それは…

 

ハガキでやりとりするということを、文化として残したい

ということでした。

 

願いごとを、未来に向かって込める

そんな思いがあったのだとか。

 

第1回は山口さんという方が大賞を受賞しました。

亡くなられた奥さんに対するものです。

 

これは山口さんに限ったことではありません。

 

このように、亡くなられた人に声を届けたいという

ハガキはたくさんありました

 

prtimes.jp

 

 

文字を見ていると、その文字から風情を感じ取れる

齋藤孝さんはいいます。

 

 

ハガキでやり取りする文化は、昔からあった通信手段

それを絶やすことなく時代にもつなげていくために、

このコンクールはできたのではないかと、私は思います。

 

 

齋藤孝さんが去年選んだ齋藤孝賞の後藤さんの作品も

素晴らしい作品だと絶賛していたのが、小山薫堂さんです。

 

さて、小山さんが絶賛するその作品とは一体、

どのようなものだったのでしょうか?

 

 

見守り活動

 

 

ここで、後藤さんの作品を引用させていただきます。

 

(以下、ハガキの名文コンクールでの作品をいくつか引用させていただきますので、ご了承ください)

 

 

「願いごと」について、みなさんも思いを馳せてみてください。

 

 

『バスの乗客のみなさんへ

 その少女が降車ボタンを押すまで、

 乗客のみなさん、押さないでください。

 

 養護学級へ1人で通う少女ですよ。

 

 お母さんに教えられた「このボタンを押すのよ」との

 手順が狂ってしまうと、バスから降りられなくなります。

 

 常連のみなさん、口伝えに新しい乗客の方々に

 教えてもらえないでしょうか。

 

 いつも笑顔の可愛い赤い帽子をかぶった、

 運転席の後ろの席にいる子に

 降車ボタンを押させてやってください。』

 

 

 

みなさん、どう感じましたか?

 

情景が、目に浮かんでくるような文章でしたよね。

 

齋藤孝さんも仰っていましたが…

こんな風に配慮して、見守ってくれる人が身近にいるんだ

ということを感じられる、素敵なハガキだと思いました。

 

こういう風に見守ってくれる人が、たくさん増えたなら。

そういう流れが広がっていったなら。

 

差別や偏見は、少しずつ減っていくのではないかと

思いました。

 

もちろん、差別や偏見は一朝一夕では変わりません

 

でも、ほんの少しでもその流れが広まっていけば、

不可能ではないのではないかと。

 

これも、一種の「願い」なのかもしれませんね。

 

 

このコンクールに応募する方々は、自分の欲望ではなく

誰かのためを思った願いを書いています。

 

短いのに、物語になっていますよね。

ショートフィルムを見せられたような気分にはなりませんか?

 

 

ここで、みなさんに質問です!

 

この作品の良いところはなんだと思いますか?

 

 

 

齋藤孝さんが出した答えは…

 

少女に向かってではなく、「乗客のみなさんへ」と

ハガキに書いているということ。

 

その点が、この作品の魅力を一段階アップさせました。

 

 

齋藤孝さんは、

 

物語性のある作品が好きなのかもしれない

 

と言っています。

 

いつになっても忘れられない思い出

 

 

第4回の齋藤孝賞を受賞したのは、岩瀬さん。

岩瀬さんの作品も、齋藤孝さんの感性に響いたようです。

 

岩瀬さんは77歳。父親に対してのハガキで、

父親と相撲を取ったときのことを書いています。

 

齋藤孝さんも、小さい頃から相撲を取るのが

好きだったということもあり、

思わず体が反応したと話しています。

 

みなさんも、想像しながら読んでみてください。

 

 

『父は小さな工場を営んでいた。

 相撲が好きで夜になると止まった機械の横に土俵を作り

 ぶつかり稽古。

 

 まるで足に根が生えたような父には誰一人勝てる者はいなかった。

 

 中学を卒業する頃やっとまわしに手が届き

 手ごたえを感じるようになって来た。

 

 そしてとうとう父に勝った。

 

 父の顔を見ると……言葉が出なかった。

 嬉しさよりも、私胸が痛くなる寂しさを感じた。

 

 夢の中でもいいです。

 父さん、もう一度相撲を取ってください。』

 

 

 

どうでしょうか?

 

 

この文は、77歳になられた岩瀬さんが父親を思い出して書いたものです。

 

77歳という年齢になっても、自分の父親と相撲をとったこと、そして相撲がとても強かった父親が、だんだん弱っていったことの寂しさが忘れられないという内容でした。

 

年をとっても、そういう思い出はなかなか忘れられないものですよね。

 

この文を読んで目頭が熱くなった、という方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 

 

齋藤孝さんが作品を選ぶ際には、1度声を出して読んでから選ぶことが多いそうです。

 

そうすると、じんわりとイメージが湧いてくるのだとか。

 

「言葉の響きが良いな」ということもわかりやすくなるそうです。

 

 

咄嗟の機転に 受けた恩

 

 

第3回の藤澤さんの作品も魅力的です。

 

これは、高校生のときに行われた

ポケットの抜き打ち検査のときの話です。

 

先生にお世話になった、

指導を受けたということが書かれています。

 

具体的にどんな作品だったのか、

みていきましょう。

 

「高校生の時のポケット抜き打ち検査で、

 私のポケットから大量の煙草の葉屑が出てきた。

 先生は私の横を過ぎたが何も言わず教壇まで登った。

 一息ついて、

 『 おい藤澤、お前明日から5分早く起きろ。』

 『寝坊するから、あわてて兄貴のズボンを穿いてくることになる。

  わかったか!!』

 もちろんその日以来、私は煙草を吸ったことはないが、

 どうしてもあの先生にもう一度会いたい。」

 

みなさん、この文を読んでどう思われましたか?

 

 

齋藤孝さんは、同じ教育者として

「素晴らしい」と称賛しています。

 

この作品の、どこが素晴らしいのか。

みなさんはわかりますか?

 

 

それは…

 

 

ポケットに煙草の葉屑が入っているところを、

「お前の兄貴のズボンだろ」ということにする、という点です。

 

もちろん、藤澤さんが煙草を吸ったということは

先生にはわかっています。

 

その上で、「お前はこんなことはやらないよな」という

 メッセージを送っていたのです。

 

このメッセージには、グッときますよね。

 

教師になる人を教えているということもあって、

こんな先生がいてくれたら本当に嬉しい」と

齋藤孝さんは、話します。

 

しかし、教育するという面ではなかなか難しい面もあります。

生徒には、悪いことを悪いと教えなくてはならなりません。

 

でも、その教え方というのはマニュアル通りに

取りしまればいいというわけではありませんよね。

 

生徒1人1人に合った方向というものがあるからです。

 

特に現代は、性格だけでなく育った環境も価値観も

違う子が増えています。

 

教師とは世代が違うため、

上手くいかないこともあるかもしれません。

 

その点で、生徒の指導には個性を重視した

やり方があるのではないかと思います。

 

しかし、そう簡単に答えは出せないものが

教育面には多くあるのかもしれません。

 

 

話を元に戻しますが…

齋藤孝さんが、この作品を読んで感動したことがあります。

 

それは、

 

「兄貴のズボンを穿いてくることになる」と

いう言葉が咄嗟に出てくるということです。

 

 「そういう風に先生が言ってくれた」という思いが、

生徒を「先生の期待に応えなければ」という気持ちに

させたということですね。

 

 

はがきにのせる 幸せへの願い

 

 

 今までの応募作品を読み返してみると、

どの作品にもある共通点がありました。

 

その共通点とは、一体なんだと思いますか?

 

 

正解は…

 

 

誰かのことを強く思っているものが多い、ということです。

 

「願いごと」というテーマを設けてはいますが、

「願い=自分はこうしたい」ということよりも

誰かのことを強く思っているものが多いんですね。

 

自分が、というよりは「こうあってほしい」という

思いが非常に多いのです。

 

本当に幸せになってほしいという思いが、

はがきの中にはつまっているような気がします。

 

 

坂本龍馬は、手紙の文も風変わりだった!?

 

 

冒頭でもお伝えした通り、齋藤孝さんはたくさんの

本を出版されていますが、その中に興味深いものがあります。

 

その本のタイトルは、

 

これなら読める龍馬からの手紙」。

 

タイトルからしてとても興味をそそられますが、

坂本龍馬の手紙というのは、どのようなものだったのでしょうか?

 

 

独特な言葉で始まる龍馬の手紙

 

龍馬の手紙は、たくさんの数が残されています。

 

齋藤孝さんは、その手紙のどれもが

1つ1つが肉声のように聞こえてくる」と表現しています。

 

 勝海舟の弟子になったときには、

勝海舟の弟子にしてもらった」ということを

お姉さんに書くのですが、その文面がすごかったのです。

 

というのも、その手紙の冒頭が

 

えへん えへん」で始まるからです。

 

 

この、「えへん えへん」とは、一体何なのか。

 

 

それは、咳払いです。

 

「たいしたもんだろう」とでも言いたげな冒頭の文章。

 

そんな、話す声が聞こえてくるような手紙

龍馬の手紙なのです。

 

坂本龍馬の手紙に綴られている言葉には、

すごい力が込められている。

 

この人が目の前で話したら、どれだけ

心を持っていかれるのだろう、と齋藤孝さん。

 

新婚旅行の旅の記録もあり、手紙には風景が

残されているものもあるのだとか。

 

坂本龍馬の手紙力には、目を見張るものがあります。

 

手紙は人生の歴史?西郷隆盛の書簡集

 

西郷隆盛についての本を刊行するにあたり、

西郷隆盛の書簡集を読んだという、齋藤孝さん。

 

この書簡集が膨大な量だったといいます。

 

この、膨大な量。どのくらいの量だったかというと…

西郷隆盛の人生がほぼわかるくらいの量だったそうです。

 

「ここで次に会おう」というのも手紙で書いていたので、

膨大な量にならざるを得ません。

 

当然のことながら…

 

現代のように文明の利器は存在していないため、

昔の人は手紙をよく書いていました。

 

会う約束をするのにも、手紙に送って書いていた。

 

それほど、手紙は身近で重要な文化であり

意思を伝える唯一の伝達手段だったんですね。

 

 

簡単には読めない!?手紙力高めな龍馬の手紙

 

齋藤孝さんが出版された、「これなら読める龍馬の手紙」。

 

「これなら読める」ということは、

読もうと思っても読めなかったくらい達筆だったのか。

 

そう思う方も、いらっしゃるのではないでしょうか?

 

 

 なぜ、「これなら読める」のか。

それは、龍馬の手紙の文体に理由が隠されています。

 

龍馬の手紙は、言葉遣いが古く意味がわかりづらいという

難点がありました。

 

その点を、カバーしたのが齋藤孝さんです。

 

わかりづらい表現や言葉遣いに対し、口語訳をつけたのです。

 

 

手紙に滲み出る「生活」

 

手紙を読むのは楽しいと話す、齋藤孝さん。

その理由は、その人の生活が顕著に出てくるからだといいます。

 

たとえば、本を出版するとき。

どうしても本となると、構えて書いてしまいます。

 

しかし、手紙では構えることなく日常を書くことができます

 

見栄や建前など気にせず、自然体で自分の今の気持ちを

綴ることができるのです。

 

これが、手紙の良いところなのだと思います。

 

新しい日本語の時代到来 求められる「声が聞こえる文体」

 

声が聞こえるように書く」。

 

これは、現代に必要な文章力なのかもしれません。

 

現代はSNSの時代。

 

だからこそ、新しい日本語の時代が到来したのだと

齋藤孝さんはいいます。

 

話すように書く」という流れがいよいよ進み、

声が聞こえるような文体がどんどん進化しています。

 

みなさんも、文章を書くときは参考にしてみてくださいね!

 

 

そういう点では、龍馬の手紙は世界初のつぶやき

だったのかもしれません。

 

 

ちなみに…龍馬は32歳という若さで亡くなりました。

 

文は人なり」という言葉があるように、

文体には人柄が滲み出ています。

 

この機会に是非、手紙やハガキを

みなさんも書いてみてはいかがでしょうか?

 

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ここまでお読みくださり、ありがとうございました。

次回もお楽しみに…♪