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まるでトイストーリー?おもちゃドクターが子供に伝えたい大切なこと

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みなさん、こんばんは。

愛原 夢音です♪

 

今回は、SUNDAY’S POSTから。

ゲストは国分寺おもちゃ病院の院長、角 文喜(すみ ふみよし)さん。

 

子供の宝物であるおもちゃを治療し、長く大切に使っていく活動を

ボランティアで行っている「おもちゃドクター」に、

おもちゃへの思いをたっぷりと伺います。

 

 

おもちゃドクターの前職 実は技術職ばかりじゃない

 

全国には、おもちゃ病院があります。

 

壊れたおもちゃを治すおもちゃドクターの前職は様々で、

面白い人がたくさんいるといいます。

 

国分寺おもちゃ病院の院長、角さんの前職は養護学校の教員。

 

「え、そうなの?」と、みなさん驚かれたことでしょう。

 

それも、そのはず。

おもちゃの修理には、技術が必要だからです。

 

おもちゃが教材?全て「手作り」の授業

 

それではなぜ、角さんはおもちゃの修理を行うようになったのか。

そのきっかけは、角さんの前職にありました。

 

角さんが務めていたのは昔の昭和樹学校、

つまり知的障害の子供たちがいる学校でした。

 

教育課程は教員が自ら考えて授業をする、

いわば「手作り」の授業だったのです。

 

自由度の高い態勢だったので、教材は教員が自ら用意しなければなりません。

 

授業は全て「手作り」で行われていたため、準備に時間がかかってしまい

なかなか追いつくことができませんでした。

 

そのため、既製品のおもちゃを使って教材をつくることが多かったのです。

既製品を改造してつくることもありました。

 

しかし、ここで問題となるのがお金です。

 

全て自前なので、教材をつくるためにどんどん既製品のおもちゃを

購入していたのでは、かなりの金銭を費やしてしまいます。

 

これは、経済的にもかなりの痛手

 

そこで考えたのが、おもちゃをできるだけ安く手に入れる方法です。

 

 

引き取ったたくさんの壊れたおもちゃ ほとんどが治った?

 

どこかに安いおもちゃはないかと探し回っていた角さんは、

ある日、角さんはスーパーの店頭で路上におもちゃを

並べて売っているおじさんを角さんは発見します。

 

そこで売られていたおもちゃは、古いものなので新品のものより遥かに安い

 

角さんは、そのおじさんと話をするうちに仲良くなり、

スーパーに通うようになります。

 

あるとき、角さんはあることに気がつきました。

 

おじさんの横にあるダンボール箱に、おもちゃが無造作に詰められていたのです。

 

しかも、たくさん。

 

「これは何ですか」と角さんが尋ねると、

壊れているから捨てる」と言う答えが返ってきました。

 

「それはもったいない!」

 

と思った角さんは、自分が教員であることや

おもちゃは大変役に立つということを伝え、

 

「もしよかったら、そこに入っているおもちゃをくれないか」と

 

話をもちかけます。

 

すると…「ぜひ持って行ってくれ」と快諾してくれました。

 

「捨てることを考えたら、生かしてもらえると大変ありがたい」

 

ということで、それ以来、壊れたおもちゃをダンボールごと

もらえるようになったのだそう。

 

ダンボールごともらってきた、たくさんのおもちゃ。

 

実際に修理してみると…

 

壊れたおもちゃのほとんどは、治せるんです!

 

それらのおもちゃは再び生き返って、使えるようになりました。

 

おもちゃは、治る」という経験を通して自信をつけた角さんは、

教員時代はずっとおもちゃの修理に没頭。

 

そのような活動を教員時代から今に至るまで、

ずっと続けてきたということなんですね。

 

最近の世の中は、「使い捨て文化」です。

壊れたから新しいものを買う、ということが当たり前になっていますよね。

 

どんどん安く、しかも簡単に手に入れられるようになっています。

 

新しいものを生み出し続けるということが良くない、と

いうわけではありません。

 

もちろん、素晴らしい面もたくさんあります。

 

しかし、修理してもまだ使えるのに流行や新しいものに

ついつい目がいってしまい捨ててしまうというのは、

非常にもったいないことだと思いませんか?

 

長く使い続けたものには、そのときの思いや気持ちなどが

ぎっしりと詰まっていて、愛着が湧きますよね。

 

時計やネックレスなどもそうですが、小さい頃使っていたものや

おもちゃは特に思い入れがあるという方は少なくないと思います。

 

動かないおもちゃ、どう治してる?原因は意外に単純

 

国分寺おもちゃ病院にくる依頼の数は、平均すると月に30件前後

 

かなり多いですよね。

 

近場の人からの依頼が多いのですが、全国からおもちゃを送ってくる人も。

 

では、どのようにおもちゃを治していくのか。

ここで少し、その様子を覗いてみましょう。

 

国分寺おもちゃ病院にあるおもちゃ。

これらは、「これから治す手術の依頼」が来ているおもちゃです。

 

まずは、電池をみてみます。

 

なぜ1番最初に電池をみるのか、みなさんはその理由わかりますか?

 

実は、電池があるかないかはおもちゃを修理のする際に1番重要なんです。

 

電池もののおもちゃって、よくありますよね。

それらのおもちゃの半分は電池がなくて、動かない

 

単純な理由で、みなさん驚きましたか?

 

私も驚きました…。

 

電池があるかないかを確認し、電池がなければそれを補充する。

そうすると、大抵のおもちゃは息を吹き返します

 

しかし、電池を入れただけでは動かないおもちゃもあります

その場合は、原因が何なのかを探るわけですが…

 

スイッチが原因で動かないこともあります。

スイッチは、いろんなおもちゃに使われている部品です。

 

そのスイッチがさびついてしまったり、

抵抗が大きすぎてうまく動かない、なんてことも…。

 

子供には、「ものを大事にするとこんなに長く使える」と

いうことを伝えたい、と角さん。

 

そして、科学の目を育ててほしいとも仰っています。

 

おもちゃの中身がどうなっているのか何が原因で

 動かなくなってしまったのかを子供たちにちゃんと伝えたい」

 

という思いで、角さんはおもちゃの修理を行っています。

 

20分ほどでおもちゃを修理できることもあるそうです。

 

みなさん、どうでしたか?

おもちゃを修理している模様をお伝えしましたが…

 

ほんの少しですが、おもちゃの修理についてなんとなく

イメージできたのではないかと思います。

 

さて、ここで素朴な疑問。

 

壊れたおもちゃを治せないことは、あるのでしょうか?

 

正解は…

 

 

治せないおもちゃは、あります

 

全体が100%だとすると、95%は治せますが、残りの5%は治らないんです。

 

では、残りの5%はどうして治らないのか。

その原因は、ICにあります。

 

IC自体が壊れているので、手の出しようがないんです。

 

代替部品がなくてつくれないものも、治すことができません

 

残りの5%は、これらを合わせたものだったんですね。

 

まるで本物!おもちゃにもカルテがある

 

国分寺おもちゃ病院には、何十年も前のおもちゃが届くこともあります。

しかも、かなりボロボロ…。

 

機械類は時々使わないと、使い物にならないんですね。

 

おもちゃの修理はというと、電気ものばかりだと思う方も

いらっしゃるかもしれませんが、実はそんなことはないんです…!

 

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ぬいぐるみがほつれてしまった、という修理の依頼もたくさんきています。

比率としては、かなりあるのだとか。

 

それらのぬいぐるみを、角さんはミシンまで買ってご自身で縫うように。

 

病院でいうと、角さんは「外科」「内科」「整形外科」までも

器用にこなす、というわけですね。

 

すごい…。

 

角さんの仕事は、壊れたおもちゃを治すだけではありません

カルテをつくるのも、大事な仕事です。

 

カルテに記録した治療経過 そこに込めた思いとは

 

そのカルテには、症状や診断結果、治療法について事細かく記載されています。

まるで、本当に病院のカルテのようです。

 

しかも!

 

カルテには写真までついているから、驚きです。

 

ただ治して返しただけでは、子供にとっては何も見えないですよね。

 

「本当はできるだけ隣にいてもらって、経過を見せてあげたいけど

 なかなかそうはいかない」と、角さん。

 

修理が終わって戻ってきたおもちゃは、壊れる前の元通りの姿ですよね。

 

見た目的には、何ら変わりはないのでどこが悪かったのか、

どう治ったのかなど、あまり深く考えることはしません。

 

ですが…

 

壊れたおもちゃをどういう経過で治していったのか、

何が原因で動かなかったのかを教えたい

 

そんな思いが、カルテには込められています。

 

カルテを一部、ご紹介しますね。

 

リカちゃん人形の場合ですが…

 

「首が取れてしまった。頭部の中から破断した首を取り出す。

 破断した首に長ネジをねじ込み、接着剤で固定」

 

といったように、治した過程が写真つきで詳しく書かれているんです。

 

結果は、治癒。退院日もしっかりと記載されています。

治しながら写真を撮る作業はコツがいるので、大変なんだとか。

 

おもちゃドクターが一番大変だった大手術とは

 

これまでに、たくさんのおもちゃを治してきた角さん。

今までで1番大変だった「大手術」はあるのでしょうか?

 

大手術はいろいろあったといいますが、

その中でも特に困難を極めたものがあります

 

それは…ボロボロの人形。

 

その人形の修理を依頼してきたのは、認知症の母親を持つ息子さん。

 

母親がいつも隣に人形を侍らせて、食事時も全く離さないので

布製の人形がボロボロになってしまったといいます。

 

これを、「なんとか治してほしい」との依頼。

 

しかも…

 

「代わりのものではなく、全く同じものでつくってほしい」

 

とのことだったので、全部糸をほどいて型紙を取り、

布を買ってきて治したのだそうです。

 

さらに…

 

「できれば防水の布にしてほしい…」との追加注文も。

 

手芸店を訪れた角さんは防水の生地があるかどうかを店員と

相談しながら、防水の布をようやく発見

 

素材探しにも一苦労です。

 

素材が無事に手に入ったところで、大手術に着手です。

 

角さん自身が全身をミシンで縫ってつくったため、手術は困難を極めました。

 

「すごい大仕事だった」と、角さんは当時を振り返ります。

 

おもちゃの治療 まさかの0円!?

 

ここでみなさん、気になりませんか?治療費は、いくらかかるのか

 

みなさんは、いくらかかると思いますか?

 

正解は…

 

 

角さんの要領次第!!

 

 

これはどういうことなのかというと…

角さんの技術で治ったものについては、一切お金は取らないんです!

 

そう、無料なんです。

 

ただし、治すためにかかった材料費については実費をいただいています

 

つまり…完全にボランティアでおもちゃの修理を行っているんですね。

 

子供が自分で壊れたおもちゃを持ってくる、なんてことも。

その場合は、お金がかかっても取れないそうです…

 

その活動が「好きだからやっている」と話す、角さん。

「趣味というのはお金で自分を買っている」ことだといいます。

 

「壊れたから捨てる」「新しいものを買う」だけではなく、

「手をかけて修理してまた元に戻して大切に使う」ということの尊さを、

おもちゃの修理を通して学ぶことができる。

 

これは、子供の教育にもとても良いことですよね。

 

 

おもちゃの修理と改造 一体何が違うのか

 

先述したように、角さんはもともと養護学校の先生をされていました。

障害のある子供のためのおもちゃを改造されています。

 

角さんは、訪問教育担当の教員でした。

 

訪問教育というのは、学校にくるのが大変な子供たちのために

学校が自宅へ訪問、あるいは教員が派遣されてその場で授業をするというものです。

 

障害の重い子供たちが多いので、もともとは教材づくりの一環として、

その担当の子供たちのためにおもちゃの改造を行っていたんです。

 

その改造されたおもちゃというのが、犬型ロボット。

 

普段はボタンを押して楽しむようなものなのですが、

意外と強く押さないと反応しないんです。

 

ところが、それを押せない子供たちもいます

 

なので、スイッチを中から取り出して

その子たちが使えるスイッチを取り付けます

 

そうすると…少し触れるだけでぶるぶるぶる、と振動が指に伝わってきます。

 

前後に動いたり、進んだり、尻尾を振ったり…。

 

とても可愛らしい動きを見せる犬型ロボットには、

感度の良いスイッチが使われています。

 

なぜ感度の良いスイッチが使われているのかというと…

ほんの指先くらいしか体を動かせない子供たちがいるから。

 

そういう子供たちにも使えるように、ということなんです。

 

角さんがおもちゃ病院協会の機関誌に投稿した内容で、

反響を呼んだ出来事があります。

 

それは、角さんが耳にしたある情報でした。

 

それは…

 

障害児を持った母親が、「スイッチで遊べるようにおもちゃを

改造してほしい」と近くのおもちゃ病院におもちゃを持ち込んだときのこと。

 

頼みにいったおもちゃ病院のおもちゃドクターには、

そういった知識がありませんから、

 

ウチはおもちゃを修理するところで、改造するところではない

 

と断られてしまったそうなんです。

 

そのことは、角さんの耳にも入ってきました。

 

「これは大変だ」と危機感を抱いた角さんは、

「ちゃんと理解してもらえればわかるのに…」ともどかしい思いを抱えていました。

 

どうしようかと考え抜いた末に、角さんは

おもちゃ病院協会の機関誌にこのことを投稿します。

 

障害の重い子供たちにとっては、新品のおもちゃであっても

自分では遊べないということ。

 

これは、壊れたおもちゃと同じことですよね。

 

それを障害児も遊べるように治す、つまり改造することは

おもちゃの修理と全く同じだということ。

 

そして、障害児も遊べるようなおもちゃの改造に力を貸してほしい

 

そういう旨を、角さんは機関誌を通して伝えました。

おもちゃドクターの技術からいうと、改造自体は実は簡単なんです。

 

機関誌の投稿の反響があったおかげで理解者も増え、

今では全国各地で障害児のためのおもちゃ改造に

取り組んでくれるおもちゃドクターも増えてきています。

 

確かに、新品でも遊べなかったら故障しているのと同じですよね。

 

特に、重い障害を持った子供たちは

ほとんどの生活が受け身であることが多いです。

 

だから、何もできないことのように思われてしまうんです

 

しかし…スイッチ1つでも使えるということは

その子供にとってはとても大きなことで、

外の世界を自分で動かせるという発見につながっていきます

 

そういうことを、遊びを通して発見していく。

 

そこから、パソコンだって動かせるようにもなります。

 

今は、技術の進歩でいろんなことができるようになっています。

スイッチ1つとっても、そうです。

 

それが、外の世界につながっていくとても大きな一歩にもなります。

 

おもちゃがつなぐ親子3代

 

これまでおもちゃを治していただいた方々から

手紙が送られてくることは、たくさんあるそうです。

 

その手紙は、カルテの裏側に貼っているのだとか。

 

ここで、実際におもちゃを治していただいた方からの声をご紹介します。

 

ゴジラのおもちゃを治していただいた方から、

角さんにお礼の手紙が届きました。

 

その方はゴジラファンなのですが、お子さんもその影響を受け

家族でよく映画を見に行くほどのゴジラ好きに。

 

その子供たちも大人になり、ゴジラのおもちゃは

すっかり置き物と化してしまいました。

 

しかし…

 

孫が生まれたこともあって、ゴジラのおもちゃを出して孫に遊ばせることに。

 

孫はゴジラのおもちゃに興味津々。ゴジラと遊ぶようになりました。

 

…と、ここで問題となるのが

 

ゴジラのおもちゃが動かないということ。

 

ずっとしまい込んでいたので、

使わないうちに動かなくなってしまったんですね。

 

そこで探し当てたのが、角さんのおもちゃ病院というわけです。

 

動いたゴジラたちに孫は驚いていましたが、息子や自分たちが

昔を思い出してとても懐かしい思いになれた、と喜びを語っていました。

 

「お願いして本当によかった」との言葉も。

 

 

ここで重要なのは、おもちゃを通して3代をつないだということ。

 

角さんによると、こういった傾向は最近増えているそうです。

 

自分の子供のために使っていたおもちゃがいらなくなったので

しまっていたけど、孫が生まれてまた遊ばせようと思ったら、

動かなくなっていた。

 

ということが、結構あるそうです。

 

みなさんも、壊れたり動かなくなったりしたおもちゃを

この機会におもちゃ病院で治してもらうのもいいかもしれません。

 

捨てるのではなく、使い続ける

 

ものを大切に使い続けるといった日本人が本来持っている

「もったいない」精神、「繕い」文化を今こそ見直すべきなのではないでしょうか。

 

 

先程述べた「おもちゃ病院協会」には1700人の会員が

登録されており、全国各地にあります。

 

壊れたり動かなくなったりしたおもちゃをみてもらいたいときは、

まずお住まいの地域の近くにおもちゃ病院がないかを調べて、

訪ねてみてください。

 

それでもない場合などは角さんのところに届ける、のもアリかもしれません。

 

最後に…

 

「手紙を書きたい相手は誰か」と問われた角さん。

 

角さんが手紙を書きたい相手は、母親なのだとか。

 

角さんの母親はすでに他界していますが、生きていたら

自分の生き方を陰ながら支えてくれたことに対して

お礼を一言伝えたかった、といいます。

 

言葉ではなかなか言えなくても、手紙だったら書けそうな気がする、と。

 

みなさんもこの機会に、大切な人へなかなか言えない気持ちを綴ってみませんか?

 

 

ここまでお読みくださり、ありがとうございました。

次回もお楽しみに…♪