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【解説】親子間や夫婦間にも効果アリ!家族療法ってどんな治療法?

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みなさん、こんばんは。

愛原 夢音です♪

 

 

今回は、「家族療法」についてです。

 

 

 

 

 

家族療法とは?

 

家族療法は家族を対象にした治療法で、1950年代に始まりました。

 

家族療法は、精神分裂病(現在の統合失調症)の患者の治療の際に

患者とその家族の間で行われるコミュニケーションに

焦点を当てた研究が行われたことにより普及しました。

 

 

家族療法の技法や理論は、様々な種類の学派に分かれています。

たくさんの学派の全てが、「システム論(システムアプローチ)」という

考え方をもとに理論がつくられています。

 

 

全ての学派に共通しているのは、以下の3点です。

 

  • システム論をもとに理論がつくられている
  • 「家族」のコミュニケーションを重視
  • 医者やカウンセラーなどがチームを組んで治療・支援を行う

 

 

家族療法は親子や夫婦間の修復にも効果がある

 

家族療法において重視されているのが、

システム論(システムアプローチ)」です。

 

システム論は、団体や組織などの複数の人が集まってできた集団を

1つのシステムと捉えます。

 

そして個人のみならず集団を治療、支援するという考え方のことです。

 

 

核家族や、家族の調和がとれない機能不全家族が増加する現代では

親子だけの問題ではなく、離婚に関する夫婦間の問題にもなっています

 

 

親子の関係や夫婦関係の治療を受け、

調和を取りたい人にオススメの治療法が、家族療法なのです。

 

また、企業などの組織を支援することにもオススメです。

 

ストレス要因にもなる人間関係において、

  • 自分がどのように行動すればいいのか
  • 今どんなことが起きているのか

 

などを冷静に判断することができるようになっていきます。

 

 

システムアプローチは問題の解決方法を探る方法

 

1人の人が心の病になってしまった場合、一般的には

その心の病気の治療は患者に焦点を当てます。

 

しかし、家族療法では患者に起こる問題や心の影響は

家族全員が互いに影響し合った結果として引き起こされると捉えています。

 

 

家族の間で起きた問題の原因は、1つとは限りません。

いくつもの要因が複雑に絡み合って、

家族が互いに影響し合うことで変化していきます。

 

その変化が悪循環に陥ってしまうと、家族のうちの誰かが

心の病になったり問題行動を起こすと考えられています。

 

 

システムアプローチで用いられる「IP」

 

システムアプローチには、「IP」という専門用語が使われています。

 

IPとは、Patient  Identified の略で、

「患者とみなされた者」という意味です。

 

 

心の病気になったり問題を起こすIPは、

家族の問題を肩代わりして症状が出ていると考えます。

 

 

家族療法では、どうして症状が出たのかではなく

どのように解決していくのかに焦点を当てます。

 

家族の関係のバランスを調整することで、治療や支援をしていくのです。

 

家族という団体を1つのシステム(集合体)と考え、

患者に起こる問題や心の病気を全体から捉えて解決していきます。

 

 

 

 

心身に影響を与えるダブルバインド

 

ベイトソンは、精神分裂病(現在の統合失調症)の患者の研究結果から

二重拘束(ダブルバインド)仮説」を発表しました。

 

 

二重拘束(ダブルバインド)仮説とは

 

人間関係の中で、言葉による言語的メッセージと

表情やしぐさなどの非言語的メッセージが矛盾することを

「二重拘束仮説(ダブルバインド)」といいます。

 

そのような状態を見聞きした人には、葛藤が生じます。

 

それらが繰り返されると、精神分裂病統合失調症)のような

症状が起きるという理論が、ダブルバインドなのです。

 

 

身近に潜むダブルバインド

 

ダブルバインドは、現代の日常生活においても多く存在します。

 

たとえば…

 

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ベイトソンがこのダブルバインドを発表するまでは、

精神分析認知行動療法のように個人に焦点が当てられた

治療が行われていました。

 

しかし、ベイトソンがこの理論を発表したことで

患者だけでなく患者の周囲の人に対しても

治療するという考え方が広がっていったのです。

 

 

家族療法の成り立ちの歴史

 

 

家族療法の成り立ちの歴史は、大きく分けて前期と後期に分けられます。

まずは、前期にどのような学派が生まれたのかをみていきましょう。

 

 

ベイトソンの理論をベースに生まれた前期の学派

 

前期は、ベイトソンの理論を参考につくられています。

 

ベイトソンはイギリスの文化人類学者でしたが、

コミュニケーションの基本「二重拘束(ダブルバインド)仮説」を

学者とチームを組んで治療を行い、「チームアプローチ」という

考え方も生み出しました。

 

 

ベイトソンらの理論は、後の学派にも影響を与えます。

 

 

前期の学派には、以下のようなものがあります。

 

  • MRI(Mental Reseach Institute)グループ
  • 精神力動的家族療法
  • 多世代派家族療法
  • 構造派家族療法
  • 戦略的家族療法
  • ミラノ派

 

 

【参考】家族療法①理論とカウンセリング技法を臨床心理士が諸学者向けに解説

 

それでは、上記の学派を詳しくみていきましょう。

 

MRI(Mental Reseach Institute)グループ

 

ベイトソンの共同研究者、ジャクソンによる学派です。

この学派は、後の短期療法に大きな影響を与えました。

 

家族の中で起きている問題は家族の悪循環であるという

考え方です。

 

 

精神力動的家族療法

 

アッカーマンを中心としてつくられた学派です。

 

精神分析を専門とするアッカーマンは、

精神分析を家族療法へ応用しました。

 

当時の精神医学は、個人への治療が当たり前とされてきました。

しかし、これにより精神医学界に「家族」という新しい考え方を作り出しました。

 

 

多世代派家族療法

 

精神科医のボーエンによる学派です。

精神分裂官女の家族について研究を重ねてきたボーエンは、

「文化と融合」という観点から多世代の家族の関係を捉えます。

 

自分の感情などが自立している程度のことを、「文化と融合」といいます。

この分化ができないと、どうなるのでしょうか?

 

 

分化が適切にできなくなってしまうと、以下のような問題が生じます。

 

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構造派家族療法

 

ミニューチンによる学派です。家族を「構造」として捉えています。

 

家族が夫婦や兄弟などの役割を持ち*1

それが1つの集合体になることを構造といいます。

 

それぞれの役割は境界線を持っています。

問題や病気を起こす家族の境界線は曖昧です。

そのため、家族の構造を再構築する治療が行われます。

 

この療法は摂食障害の治療にも効果的で、高く評価されています。

 

 

戦略的家族療法

 

 

ヘイリーらによる学派です。

現在抱えている問題の解決を重要視する考え方です。

 

家族一人一人の考え方や性格を直していくのとは違い、

問題や病気を解決するために家族がどのような行動を

とれば良いのかを考えて取り組んでいきます。

 

 

ミラノ派

 

精神科医セルビーニ・パラツォーリによる学派です。

家族療法研究センターをイタリアのミラノに設立し、

短期療法を生み出します。*2

 

理論や技法は、MRIグループとよく似ています。

 

 

【参考】家族療法②研究で生まれた様々な技法を知ろう!

 

問題解決へと移行した後期の学派

 

ベイトソンらが「二重拘束(ダブルバインド)仮説」を発表してから

30年近く経った1980年代には、

 

  • 家族の間で現実で起こっている問題を解決しよう
  • IPが発症している病気の症状を改善しよう

 

というように、問題解決志向が重視されるようになります。

 

こうした動きから、後期は以下のような学派が誕生しました。

 

  •  解決志向アプローチ(Solution focused approach)
  • ナラティヴ・モデル
  • リフレクティングプロセス
  • 協働的言語システムアプローチ

 

前期後期あわせて、様々な学派が生まれました。

これにより、これらの理論が短期療法(ブリーフセラピー)に

発展したといわれています。

 

 

短期療法やナラティブセラピーの基礎になった

 

後期になると、ブリーフセラピーやナラティブセラピーの

基礎をつくる学派が登場するようになります。

家族療法は、様々な学派が重なり合ってできている療法なのです。

 

それでは、それぞれの学派について詳しくみていきましょう。

 

 

解決志向アプローチ(Solution focused approach)

 

ティーヴ・ド・シェイザー、

インスー・キム・バーグらによる学派です。

 

短期療法(ブリーフセラピー)の1つといわれています。

 

この方法の特徴は、問題や原因を探すのではなく

問題や病気の解決に役立つ資源(リソース)や

強みを探して活用することです。

 

何がいけないのかではなく、

  • 解決するために必要なものは何なのか
  • 何ができるのか

 

を考えていきます。

 

 

ブリーフセラピーについては、以下の記事にまとめているので

是非チェックしてみてください!

 

jyumeno.hatenablog.com

 

 

ナラティヴ・モデル

 

マイケル・ホワイトやデーヴィッド・エプストンらによる理論です。

この理論は、1980年代につくられました。

 

現在は「ナラティブセラピー」という技法として確立しています。

 

問題を抱える人たちが、

  • 経験していること
  • どのように生活しているか
  • 抱えている問題

 

などを物語として書き換え新しい物語を作り出すことで、

問題解決を図る方法です。

 

 

 

リフレティング・プロセス

 

トム・アンデルセンを中心につくられた学派です。

 

前期の方法では、

ミラーの中を観察しながらチームを組んだカウンセラーが

治療や支援について話し合う方法が取られていました。

 

 

しかし後期では、

その様子を相談者が実際に見ることができるようになりました

 

この方法により、自己治癒力を養えるようになりました。

 

 

協働的言語システムアプローチ

 

ハロルド・グーリシャンや

ハーレン・アンダーソンらによる学派です。

 

社会構築主義の考え方を取り入れ、対話を行う中で

人間関係を理解するのが、この方法です。

 

 

ここでの「理解」とは、新しい意味を構成することを指します。

 

カウンセラーは偏見に囚われず、無知の姿勢で

クライエント(相手)と「理解」を共に探していきます。

 

この学派も、「ナラティブセラピー」として確立しています。

 

 

【参考】家族療法③研究から生まれた理論を知ろう!

 

  次回もお楽しみに…♪

 

 

 

 

 

 

 

 

*1:サブシステムといいます

*2:システミック・アプローチともいわれています。