従業員のストレス要因に気づくために大切なこと
みなさん、こんばんは。
愛原 夢音です♪
今回は、「従業員のストレス要因に気づくために大切なこと」についてです。
国が示す心理社会的ストレスの基準と、
長時間労働から労働者を守るためのルールについて
書いていきたいと思います。
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精神障害と心理社会的ストレスの関係
近年の精神障害などに関連した
労災の請求件数が増加していることを受け、
「心理的負荷による精神障害等に係る業務上外の判断指針」*2が
公表されました。
「心理的負荷による精神障害等に係る業務上外の判断指針」とは、
一体どのような内容なのでしょうか。
早速、具体的な内容についてみていきましょう。
労災判断基準と原因、影響度が示されている
この指針では、労災判断基準が示されています。
労災認定の際に、その原因が業務上か業務上外かを判断したり、
その影響度(強度)を見極めたりすることなどが示されています。
強度の評価においては、仕事の量や質、職場環境や支援・協力体制の変化について
検討されることになっています。
心理的負荷が強い出来事を防ぐには?
2011年に、審査期間の短縮を目的に
変更点は、以下の3点となっています。
◇評価表がよりわかりやすく改訂された
◇いじめやセクシュアルハラスメントなどの出来事が
繰り返されるものについては、その開始時からの全ての行為を評価する
◇精神科医の判定を、判断が難しい事案のみに限定した
この認定基準が発表されたことにより、1999年来の旧判断基準は廃止されました。
管理監督者は、
業務による心理的負荷が「強」とされる出来事が起きるのを防ぐ努力をするとともに、そうした出来事を体験した従業員の精神健康状態をよく確認しておく必要があります。
業務による強い心理的負荷
出来事の類型 | 具体的な出来事 | |
---|---|---|
特別な出来事 | 心理的負荷が極度のもの |
・生死に関わる極度の 苦痛を伴う、または 永久に労働が不可能となる 後遺障害を残す業務上の 病気や怪我 死亡させ、または 生死に関わる重大な 怪我を負わせた 抑圧して行われた |
極度の長時間労働 |
・発病直前の1ヵ月に おおむね160時間を 超える、あるいは同程度(3週間に120時間以上 など)の時間外労働を行う |
|
特別な出来事以外 |
事故や災害の体験 |
・重度の病気や怪我 災害の体験・目撃 |
仕事の失敗、 過重な責任の発生 |
・業務に関連し、重大な 人身事故、重大事故を 起こした などの重大な仕事上の ミスをし、 事件について責任を 問われた 違法行為を強要された 課されたり、 |
|
仕事の量・質 |
・仕事内容・仕事量の 大きな変化を生じさせる 以上の時間外労働を行った 連続勤務を行った |
|
役割・地位の変化など |
・退職を強要された 業務を、一人で担当する ようになった 不利益な取り扱いを受けた |
|
対人関係 |
・ひどい嫌がらせ、 いじめ、暴行を受けた トラブルがあった |
|
セクシュアルハラスメント | ・セクシュアルハラスメントを受けた |
心理的負荷が強いとされる職場内外の出来事
心理的負荷が「強」(強度Ⅲ)と判定される出来事は、
精神障害との関連性が認められやすくなっています。
心理的負荷「強」は、
人生の中で稀に経験する強い心理社会的ストレスのことをいいます。
業務による心理的負荷表
出来事の類型 | 平均的な心理的負荷の強度 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
具体的な出来事 | 心理的負荷の強度 | ||||||
Ⅰ | Ⅱ | Ⅲ | |||||
①事故や災害の体験 | (重度の)病気や怪我をした | ☆ | |||||
悲惨な事故や災害の体験、目撃をした | ☆ | ||||||
②仕事の失敗、過重な責任の発生等 |
業務に関連し、重大な人身事故、 重大事故を起こした |
☆ | |||||
会社の経営に影響するなどの 重大な仕事上のミスをした |
☆ | ||||||
会社で起きた事故、事件について、 責任を問われた |
☆ | ||||||
自分の関係する仕事で多額の損失等が生じた | ☆ | ||||||
業務に関連し、違法行為を強要された | ☆ | ||||||
達成困難なノルマが課された | ☆ | ||||||
ノルマが達成できなかった | ☆ | ||||||
新規事業の担当になった、 会社の立て直しの担当になった |
☆ | ||||||
顧客や取引先から無理な注文を受けた | ☆ | ||||||
顧客や取引先からクレームを受けた | ☆ | ||||||
大きな説明会や公式の場での発表を強いられた | ☆ | ||||||
上司が不在になることにより、 その代行を任された |
☆ | ||||||
③仕事の量・質 |
仕事内容・仕事量の(大きな)変化を 生じさせる出来事があった |
☆ | |||||
1か月に80時間の時間外労働を行った | ☆ | ||||||
2週間にわたって連続勤務を行った | ☆ | ||||||
勤務形態に変化があった | ☆ | ||||||
仕事のペース、活動の変化があった | ☆ | ||||||
④役割・地位の変化等 | 退職を強要された | ☆ | |||||
配置転換があった | ☆ | ||||||
転勤をした | ☆ | ||||||
複数名で担当していた業務を1人で 担当するようになった |
☆ | ||||||
非正規社員であるとの理由等により、 仕事上の差別、不利益取り扱いを受けた |
☆ | ||||||
自分の昇格・昇進があった | ☆ | ||||||
部下が減った | ☆ | ||||||
早期退職制度の対象となった | ☆ | ||||||
非正規社員である自分の契約満了が 迫った |
☆ | ||||||
⑤対人関係 |
(ひどい)嫌がらせ、いじめ、 又は暴行を受けた |
☆ | |||||
上司とのトラブルがあった | ☆ | ||||||
同僚とのトラブルがあった | ☆ | ||||||
部下とのトラブルがあった | ☆ | ||||||
理解してくれた人の異動があった | ☆ | ||||||
上司が変わった | ☆ | ||||||
同僚等の昇進・昇格があり、 昇進で先を越された |
☆ | ||||||
⑥セクシュアルハラスメント | セクシュアルハラスメントを受けた | ☆ |
※出典:厚生労働省「心理的負荷による精神障害の認定基準について」より一部抜粋
業務以外の心理的負荷評価表
出来事の類型 | 平均的な心理的負荷の強度 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
具体的な出来事 | 心理的負荷の強度 | ||||||
Ⅰ | Ⅱ | Ⅲ | |||||
①自分の出来事 | 離婚又は夫婦が別居した | ☆ | |||||
自分が重い病気や怪我をした又は流産した | ☆ | ||||||
自分が病気や怪我をした | ☆ | ||||||
夫婦のトラブル、不和があった | ☆ | ||||||
自分が妊娠した | ☆ | ||||||
定年退職した | ☆ | ||||||
②自分以外の家族・親族の出来事 | 配偶者や子供、親又は兄弟が死亡した | ☆ | |||||
配偶者や子供が重い病気や怪我をした | ☆ | ||||||
親類の誰かで世間的にまずいことをした人が出た | ☆ | ||||||
親族とのつきあいで困ったり、辛い思いをしたことがあった | ☆ | ||||||
親が重い病気や怪我をした | ☆ | ||||||
家族が婚約した又はその話が具体化した | ☆ | ||||||
子供の入試・進学があった又は子供が受験勉強を始めた | ☆ | ||||||
親子の不和、子供の問題行動、非行があった | ☆ | ||||||
家族が増えた(子供が生まれた)又は減った(子供が独立して家を離れた) | ☆ | ||||||
配偶者が仕事を始めた又は辞めた | ☆ | ||||||
③金銭関係 | 多額の財産を損失した又は突然大きな支出があった | ☆ | |||||
収入が減少した | ☆ | ||||||
借金返済の遅れ、困難があった | ☆ | ||||||
住宅ローン又は消費者ローンを借りた | ☆ | ||||||
④事件、自己、災害の体験 | 天災や火災などにあった又は犯罪に巻き込まれた | ☆ | |||||
自宅に泥棒が入った | ☆ | ||||||
交通事故を起こした | ☆ | ||||||
軽度の法律違反をした | ☆ | ||||||
⑤住環境の変化 | 騒音等、家の周囲の環境(人間環境も含む)が悪化した | ☆ | |||||
引っ越した | ☆ | ||||||
家屋や土地を売買した又はその具体的な計画が持ち上がった | ☆ | ||||||
家族以外の人(知人、下宿人など)が一緒に住むようになった | ☆ | ||||||
⑥他人との人間関係 | 友人、先輩に裏切られショックを受けた | ☆ | |||||
親しい友人、先輩が死亡した | ☆ | ||||||
失恋、異性関係のもつれがあった | ☆ | ||||||
隣近所とのトラブルがあった | ☆ |
※出典:厚生労働省「心理的負荷による精神障害の認定基準について」より一部抜粋
労働時間と健康問題の関係
労働者の長時間労働は、うつ病をはじめとするメンタルヘルス不調だけでなく
脳・心臓疾患との関連性についても医学的知見が認められています。
週に40時間以上の労働をするには、36協定の締結が必要
労働者の労働時間は労働基準法で定められており、
事業者が労働者に週40時間以上の労働を課すには、
労働者と労使協定「36(サブロク)協定」を締結する必要があります。
期間ごとに時間外労働の限度時間があるので、その基準に基づいた管理も必要です。
この限度時間の延長を定めることができるのは、厚生労働大臣です。
ただし、臨時的に限度時間を超えて時間外労働を行わなければならない場合に
「特別条項付き36協定」を結ぶことにより、
限度時間を超える時間を延長することができます。
36協定での労働時間延長の「限度時間」早見表
期間 | 1週間 | 2週間 | 4週間 | 1ヵ月 | 2ヵ月 | 3ヵ月 | 1年間 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
限度時間 | 15時間 | 27時間 | 43時間 | 45時間 | 81時間 | 120時間 | 360時間 |
労働時間を把握するために、事業者がしなければならないこと
長時間労働が招く過重労働から労働者を守るために、
2002年、「過重労働による健康障害防止のための総合対策」*3が厚生労働省によって公表されました。
この「総合対策」では、労働時間の適正な把握のために
事業者が講ずべき措置として以下の4つの内容が重要とされています。
また、労働安全衛生法に基づく健康診断を強化する制度として、
次の補助金制度があります。
二次健康診断等給付制度
: 直近の定期健康診断で、肥満、高血糖、高血圧、脂質異常症について
異常所見が認められる場合には、労働者の請求に基づき二次健康診断と
特定保健指導が労災保険から給付され、費用は免除されます。
過労死とはどういうことを指すのか
2014年の「過労死等防止対策推進法」により、
過労死について定義がされました。
「過労死などに防止対策推進法」によると、
・業務における過重な負荷による脳血管疾患や
自殺による死亡
・脳血管疾患や心臓疾患、精神障害 が
過労死と定義されています。
面接指導などの基準
「総合対策」で示されている面接指導などの基準は
次の通りです。
時間外、 休日労働時間 |
労働者からの申出 | 医師による面接指導 (記録は5年間保存) |
事後措置 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
月に 100時間超 |
あり | 確実に実施しなければならない(義務) | 適切な措置を実施する | ||||
月に 80時間超 |
あり | 実施するよう努める | |||||
月に 100時間超 または 2~6ヵ月の平均が80時間超 |
なし | 実施するよう努める | 準じた措置の実施に努める | ||||
月に 45時間超 |
なし | 措置を講ずることが望ましい |
まとめ
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