「職業性ストレス簡易調査票」の活用で、ストレスチェックを
みなさん、こんばんは。
愛原 夢音です♪
今回は、「職業性ストレス簡易調査票」についてです。
職業性ストレス簡易調査票の特徴と、
調査票を活用する際の注意点について書いていこうと思います。
この記事はこんな方におすすめ!
職業性ストレス簡易調査票でストレスがチェックできる
ストレスチェックで自分の状態をチェック
ストレスチェックとは、ストレスに関するいくつかの質問項目に
自分の現在の状態が当てはまるかどうかを回答し、
自分のストレスの状態や傾向について把握しやすくするものです。
ストレスチェックの結果は受けた時点の職場環境や健康状態によって
左右されるため、定期的にチェックし、自分の状態を把握することが大切です。
「職業性ストレス簡易調査票」の特徴
「職業性ストレス簡易調査票」は厚生労働省(当時は厚生省)の委託研究の成果物で、信頼性の高いチェックリストです。
この「職業性ストレス簡易調査票」には、次のような特徴があります。
・自記式(自己記入式)のチェックリスト。
57項目あり、約10分で回答できるため、簡便で職場で実施しやすい。
・あらゆる業種の職場で利用できる。
・ストレス反応だけでなく、仕事上の「ストレス要因」「ストレス反応」
「修飾要因(職場や家庭から得られるソーシャルサポートや、生活の満足感など)」
を同時に評価できる、多軸的なチェックリストである。
・ストレス反応は、「心理的反応」だけでなく「身体的反応」も測定する。
・心理的ストレス反応は、「ネガティブな反応」だけでなく
「ポジティブな反応」も測定できる。
・仕事のストレス要因は、「仕事の負担度」「仕事のコントロール度」
「仕事での対人関係」「仕事の適合性」などであり、
それぞれ要チェックの項目が多くなるにつれて、
心理的ストレス反応と身体的ストレス反応が要チェックとなる確率が高まる。
2012年には、従来の調査票に新しい尺度を追加した
「新職業性ストレス簡易調査票」が開発・公開されました。
この「新職業性ストレス簡易調査票」は、
仕事の意義や上司のリーダーシップなどのポジティブや側面も評価し、
職場環境をより広く評価できるようになっています。
こちらの記事も参考にしてみてください♪
職業性ストレス簡易調査票を活用する際の注意点
「職業性ストレス簡易調査票」は、
ストレスチェック制度で使用が推奨されており、
使い勝手も良いですが活用する際に注意すべきことがあります。
注意点は、以下の通りです。
・「職業性」のストレス調査票なので、測定するストレス要因は
「仕事上のストレス」に限られている。家庭生活などの
「仕事外のストレス要因」については測定していないので、注意が必要。
・回答者のパーソナリティ(性格傾向)については、考慮されていない。
自己記入式の調査票なので、評価の際にはその点を考慮しなければならない。
・ストレスチェックを実施した時点のストレス状況しか把握できていない。
・調査結果が常に「正確な」情報をもたらすとは限らない。
ストレス状態を把握する際の「あくまで参考資料」として活用する。
・結果に心配な点があった時に相談できるように、
事業所内のスタッフや社外の専門家に相談できる手順を準備することが望ましい。
まとめ
◎「職業性ストレス簡易調査票」は多軸的な調査票ではあるが、
「職業性」のストレス調査票であり、
仕事以外のストレス要因や性格傾向については、測定していない
◎「職業性ストレス簡易調査票」は、心理的ストレス反応に関して
チェックの数が一定以上になると、ストレスへの気付きのための参考資料として
◎項目数は57項目で、職場で簡便に利用できる
◎ストレスチェックの結果は、性格検査のようにある程度一定の数値を
安定して示すことはない。同一人物でも、その時の職場環境や
心身の健康状態によって左右されることがある
いつもと違う自分に気付くポイントは?
みなさん、こんばんは。
愛原 夢音です♪
今回は、「いつもと違う自分に気付くポイント」についてです。
いつもと違う自分に気付いて対処することが、
メンタルヘルス不調の予防には大切です。
早速、みていきましょう!
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自分で気が付く変化のポイント
ストレスによって生じる心身の反応は、人によって異なります。
そのため、ストレスを早期に発見するには
「いつもと違う自分に気付く」ことが大切です。
◇自分が気付く変化*1
- 悲しい、憂鬱な気分、沈んだ気分
- 何事にも興味が湧かず、楽しくない
- 疲れやすく、元気がない(だるい)
- 気力、意欲、集中力の低下を自覚する(億劫、何もする気がしない)
- 寝つきが悪くて、朝早く目が覚める
- 食欲がなくなる
- 人に会いたくなくなる
- 夕方より朝の方が気分、体調が悪い
- 心配事が頭から離れず、考えが堂々巡りする
- 失敗や悲しみ、失望から立ち直れない
- 自分を責め、自分は価値がないと感じる など
「いつもと違う自分」が2週間続いたら、対処が必要
「いつもと違う自分に気付く」ということは、
自分と他人を比べた違いをいうのではなく、
「今までの自分」と「現在の自分」との違いを捉えるということです。
普段から頭痛を起こしやすい人がストレスから頭痛になったとしても、
「ストレスによる身体面の変化」とは気が付かないかもしれません。
しかし、頭痛とともに吐き気がしたり、いつもより頭痛の回数が多かったりしたら、
「いつもと違う」と認識することができますよね。
このような「いつもと違う」変化が2週間続く場合は、
専門家に相談するなど、何らかの対処が必要です。
「いつもと違う自分に気付く」には、
自分の心身の変化を時系列で捉えることが大切です。
お読みくださり、ありがとうございました!
次回も、お楽しみに…♪
まとめ
◎気持ちが落ち込み気力が出ない、など「いつもと違う」自分に気付いた場合、
その状態が2週間継続したら、専門家に相談するなどの対処が必要である
◎集中力のなさなど、自分の心理面の変化を捉えた時、
「こうなったのは自分の性格の問題だ」と自責的に考えてしまうことがよくあると
気付くことが大切である
◎肩凝りになりやすい人が肩凝りと同時に頭痛がするようになった場合、
普段の肩凝りの症状と同時に別の症状もあるので、
「いつもと違う」サインと考えてよい
◎プライベートなことであっても、今まで関心のあった趣味をする気がないのは
「自分が気付く変化」といえる
◎「今まで楽しみにしていたテレビ番組を最近見る気にならない、
見ても楽しめない」のは、自分が気付く変化といえる
ストレス反応はどのように現れるのか?
みなさん、こんばんは。
愛原 夢音です♪
今回は、「ストレスの現れ方」についてです。
ストレス反応はどのような面で現れるのか、
仕事ぶりに現れる変化にはどのようなものがあるのかを書いていこうと思います。
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変化は身体・心理・行動面に現れる
ストレス反応は、「身体面」「心理面」「行動面」に現れます。
長時間ストレスにさらされたり強いストレスを受けたりした場合は、
ストレス要因の種類に関係なく同じ反応が生じます。
これを、汎適応症候群といいます。
また、ストレス反応はストレスを受けた直後に生じやすい「急性反応」と、
長期間ストレスを受けたことで生じやすくなる「慢性反応」とに分けられます。
◇身体的反応
急性反応 | 動悸、発汗、顔面紅潮、胃痛、下痢、震え、 筋緊張、めまいなど |
慢性反応 | 疲労、不眠、循環器系症状、消化器系症状、神経筋肉系症状、 内分泌の異常(糖尿病など)、倦怠感、不定愁訴など |
特徴
・「具合の悪さ」として体感されやすい。自分で気づきやすい。
◇心理的反応
急性反応 | 不安、緊張、怒り、興奮、混乱、落胆、焦燥感など |
慢性反応 | 不安、短気、抑うつ、無気力(何もかもが嫌だ)、イライラや不満、 退職願望(会社を辞めたい)、億劫、自責感など |
特徴
・「具合の悪さ」として体感されやすい。
・気付いても対処の仕方が難しい。
・「こうなったのは自分の性格が弱いから」「自分がしっかりしていないから」と
自責的に認知してしまう。
・逆に他罰的になって職場を批判的に捉えてしまい、
職場の人間関係がうまくいかなくなる場合もある。
◇行動的反応
急性反応 | 回避、逃避、エラー、事故、口論、喧嘩、どなる など |
慢性反応 | 遅刻、早退、欠勤、作業能率の低下、大酒、喫煙、過食、 趣味をしなくなる など |
特徴
・自分では気付かなくても、周囲の人が気づきやすい。
仕事ぶりに現れる反応
職場では、ストレス反応が仕事ぶりや出勤状況に現れます。
いつもなら間に合うような仕事も期限に間に合わなくなったり、
取引先からの苦情が目立つようになります。
上司に指摘された場合は、
素直に自分の状況を振り返ってみることが必要です。
皆さんも、チェックしてみてください!
職場でみられる「いつもと違う」様子
職場でみられる「いつもと違う」様子*1
①遅刻、早退、欠勤が増加
②休みの連絡が無い(無断欠勤がある)
③残業、休日出勤が不釣り合いに増える
④仕事の能率が悪くなる。思考や判断力が低下する
⑤報告や相談、職場での会話がなくなる(あるいはその逆)
⑥表情に活気がなく、動作に元気がない(あるいはその逆)
⑦不自然な言動が目立ち、同僚と言い争いになったりする
⑧仕事のミスや事故が目立つ
⑨服装が乱れたり、衣服が不潔になったりする
まとめ
◎行動面の変化は「急性反応」と「慢性反応」とに分けられる
◎「最近、元気がない」というのは、心理面の変化の「慢性反応」である
◎身体面の変化には、身体疾患が含まれる
◎仕事のミスが増えて目立ってくるのは、「仕事ぶりの変化」といえる
メンタルヘルス不調予防の対策とは?
みなさん、こんばんは。
愛原夢音です♪
今回は、「早期対応の重要性」についてです。
事業者が取り組むべき対策と、
メンタルへルス不調の早期対応で気をつけることについて書いていこうと思います。
この記事はこんな方におすすめ!
メンタルヘルス不調を予防するために
過重労働や不調を予防するきっかけとして、
メンタルヘルス不調に至る従業員が増加しています。
予防のためには、次のような工夫をするとよいとされています。
メンタルヘルス不調予防の対策
①自分で残業時間の限度を決めて、その範囲を守るようにする
②1週間に最低1日の休日を確保する
③業務の進捗状況を把握して、週末は休みを取るようにするなど
メリハリのある生活を心がける
ストレス状態に気づくことが、メンタルヘルス不調の早期発見につながる
発症の状態が第三者にはわかりにくいという特徴があります。
ストレスに気づくことができればそれに対処する行動が取れるので、
まずは自分のストレス状態に気がつくことが肝要です。
メンタルヘルスの初期段階には、次のような特徴があります。
①一時的な心理的反応なのか、すでに病的なレベルの問題になっているのか、
重症度の判断がつきにくい
②人によって、ストレスの現れ方が異なる。
「気分が沈む」「やる気にならない」などの心理面に現れる人、
微熱、腰痛、食欲不振などの身体面に出る人など、様々である
③本来は本人が最初に不調に気付くはずだが、
本人の判断力が低下していると、第三者の指摘で初めて気づくことがある
心身の不調を感じたらやるべきこと
心身の不調を感じたら、次のような対応をしましょう。
①ストレスの原因について考える。
事実を客観的に分析し、自分の心身の不調との関係を整理してみる。
②体調の回復を優先して、問題の解決に取り組む。
③メンタルヘルス不調の問題は、独力で対処できないことが多いので周囲に相談する。
自発的に相談する行為自体が問題解決のきっかけとなる。
④友人や家族、職場の同僚、産業医など、第三者に協力を求める。
⑤不調の背景には個人の既往歴や、性格傾向、家族の状況などが絡むことが多いので、
安易な自己判断はしない。
事業場内システムを整備して、早期に対応する
事業者が労働者の健康管理について真っ先に取り組むべきなのは、
産業保健スタッフの選任と、健康診断・保健指導の適切な実行です。
具体的には、
定期健康診断、深夜残業などの特定業務従事者への6ヵ月以内ごとの健診、
過重労働者やストレスチェックの結果による医師面接の実施などを行うことで、
体調不良の早期発見につながります。
また、こうしたシステム化により労働者と産業保健スタッフの接点が増え、
信頼関係ができることも、相談しやすさの向上などにつながります。
職場にはもともと、日常の人間関係を通じて管理監督者が労働者の体調不良に
気付くシステムがあります。
上記の健診などはそれを補完する早期発見システムといえます。
まとめ
◎メンタルヘルス不調の初期症状は、身体面ではなく心理面に現れる人もいる
◎メンタルヘルス不調の多くは、自力で解決できないので周囲の助けが必要
◎深夜残業を含む業務に常時従事する労働者に対しては、
6ヵ月以内ごとに1回の健康診断の実施が必要である
安全配慮義務と自己保健義務
みなさん、こんばんは。
愛原 夢音です♪
今回は、「安全配慮義務と自己保険義務」についてです。
この記事はこんな方におすすめ!
事業者による「安全配慮義務」
2008年3月施行の労働契約法において、安全配慮義務は次のように明文化されました。
労働契約法5条(労働者の安全への配慮)
「使用者(事業者)は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を
確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。」
安全配慮義務については、こちらの記事にまとめていますので
こちらも是非読んでみてください。
労働者による「自己保健義務」
自己保険義務とは?
労働者の安全と健康、労働災害を防止するためには、
事業者による災害防止の措置(安全のためのルール)だけではなく、
労働者による災害防止措置への積極的な参加と協力、
自分自身の健康を管理する努力が必要です。
このように、労働者が安全と健康に対して主体的に取り組み、
様々な義務を果たすことを自己保健義務といいます。
健康診断で「脂質異常症」と指摘されたら、
医療機関を受診して食生活を見直す努力をするというように、
自身の健康を主体的に管理することが自己保険義務にあたります。
ストレスチェックの活用も自己保健義務
また、2015年12月よりストレスチェックが施行されました。
受験者である労働者は、自分のストレスチェックの結果、点数が高い場合に
医師による面接指導を受けることも可能です。
チェックの結果を活用して心身の健康を維持することも、
労働者の自己保健義務といえます。
自己保健義務は、労働安全衛生法で使用されている用語ではなく
概念を意味しますが、労働安全衛生法では次のように示されています。
労働安全衛生法における自己保健義務
①労働災害防止義務(4条)
(労働者の責務)
「労働者は、労働災害を防止するため必要事項を守るほか、事業者その他の関係者が
実施する労働災害の防止に関する措置に協力するように努めなければならない。」
②健康診断の受診義務(66条)
「労働者は、全各項の規定により事業者が行う健康診断を受けなければならない。
ただし、事業者の指定した医師又は歯科医師が行う健康診断を受けることを希望しない場合において、他の医師又は歯科医師の行うこれらの規定による健康診断に相当する
健康診断を受け、その結果を証明する書面を事業者に提出したときは、この限りではない。」
③保健指導後の健康管理義務(66条)
「労働者は、前条の規定により通知された健康診断の結果及び前項の規定による
保健指導を利用して、その健康の保持に努めるものとする。」
④健康の保持増進義務(69条)
「労働者は、前項の事業者が講ずる措置を利用して、その健康の保持増進に努める
ものとする。」
上記からもわかるように、自己保健義務は
健康診断で指摘された異常値に対して回復のための適切な保健行動をとること、
及び必要な医療を受けて体調を管理することを意味します。
まとめ
◎安全配慮義務は事業者が労働者に対して負っている労働契約法の上の債務である
◎健康診断の受診義務は、労働安全衛生法に規定されている
◎自己保健義務は、労働安全衛生法にこれを裏付ける規定がある
◎保健指導後の「健康管理義務」は、有所見と診断された労働者の健康の保持増進に
寄与しなければならないという労働者の義務である
過重労働が及ぼす健康への影響
みなさん、こんばんは。
愛原 夢音です♪
今回は、「過重労働が及ぼす健康への影響について」です。
近年の労働者の健康状態と、
過重労働やストレスが引き起こす健康障害について書いていこうと思います。
この記事はこんな方におすすめ!
健康診断で異常を指摘される労働者が増加
定期健康診断において異常所見を指摘される従業員(有所見者)の比率は、
毎年増加する傾向にあり全労働者の53.6%を占めています。
最も有所見率の高い項目は、血中脂質です。
脂質異常症は、高血圧、高血糖とともに動脈硬化を促進する危険因子です。
そのまま放置すると脳血管疾患や心疾患、循環器疾患を発症しやすくなりますので、
注意が必要です。
過重労働やストレスが健康障害を引き起こすメカニズム
過重労働(長時間労働)がどのように関係して従業員の健康を害するのか、
この因果関係は科学的に完全に証明されているわけではありません。
しかし、過重労働やストレスという要因が健康障害を引き起こすメカニズムについては次のような想定がされています。
生体的な反応
①過重労働などのストレスは、恒常的に交感神経系と内分泌系を刺激して
アドレナリンやノルアドレナリンの分泌を亢進させる
※交感神経系 : 活動・緊張・ストレス状態で活性化する
副交感神経系: 休息・回復・リラックス状態で活性化する
②血圧が上昇し、血糖値を上げて代謝のバランスをがくずれる
生活習慣への影響
①ストレスがたまると気分が不安定になり、喫煙や飲酒の量が増えたり、
食事の量が増えたりする。
また、過重労働で帰宅時間が遅くなると休息の時間が減り、
運動不足になりやすくなる。
②このような乱れた生活習慣は高血圧症、高脂血症、糖尿病を悪化させ、
動脈硬化を進行させて結果的に過労死の危険性を高める
過労死
過労死とは、
「過度な労働負担が誘因となって、高血圧や動脈硬化などの基礎疾患が悪化、
脳血管疾患や虚血性心疾患、急性心不全などを発症し、永久的労働不能又は
死に至った状態」と定義されています。*1
※過労死についてはこちらの記事にもまとめているので、
こちらも是非チェックしてみてください。
話を元に戻します。
このマニュアルでは、過重労働を原因とするメンタルヘルス不調についての
定義はされていません。
しかし、「精神障害の労災認定の基準に関する専門委員会」(2011年11月)は、
過重労働(長時間労働)とメンタルヘルス不調との因果関係を認めました。
過重労働で帰宅時間が遅くなると睡眠不足となり、
睡眠による疲労回復が困難になります。
過重労働は、身体面だけでなくメンタルヘルスの面においても
良くない影響を及ぼすといえます。
また、2014年11月に過労死等防止対策推進法が施行されました。
これは過労死などに対する社会の認知を高め、
過労死防止の対策を進める目的としたものです。
実態調査や情報収集の義務がありますが、
労働時間の具体的制約といった規制がされたわけではありません。
まとめ
プライバシーの配慮と注意点
みなさん、こんばんは。
愛原 夢音です♪
今回は、「プライバシーへの配慮と注意点」についてです。
健康情報を取り扱う際に注意すべき点と、
安全配慮義務・守秘義務の考え方について書いていきたいと思います。
この記事はこんな方におすすめ!
心の健康とプライバシーの配慮
労働者のメンタルヘルス情報は、労働者のプライバシー保護と意思の尊重という
2つのバランスを取りながら、より慎重な取り扱いが求められます。
また、職場のメンタルヘルスに関係する多くの関係者には
プライバシーへの配慮が必要とされています。
◇プライバシー配慮を求められる関係者の例
・事業者
・事業場内産業スタッフなど
心の健康づくり専門スタッフなど)
・同僚の労働者*1
安全配慮義務と守秘義務
労働者の健康に配慮する上で、
事業者は安全(健康)配慮義務を履行する必要があります。
安全配慮義務について忘れてしまった方は、ここでもう一度復習しておきましょう!
さて、話をもとに戻しましょう。
国内では、2008年より前は法的に明文化されてきませんでしたが、
2008年からは労働契約法5条で明文化されました。
また、関係者には守秘義務を履行することが求められ、
特に産業保健スタッフ(医師・保健師・看護師)については
次の法律の遵守義務と罰則規定があります。
◇関係者の守秘義務に対応する法
医師 | 刑法(134条1項) | |
保健師・看護師 | 保健師助産師看護師法(42条2項) | |
健康診断に携わる事務担当者 | 労働安全衛生法(104条) | |
その他第三者 | 民法上の損害賠償責任を負う可能性*2 |
個人情報保護法
個人情報の取り扱いの意識が高まる中、
2015年9月に個人情報保護法が改正されました。
10年ぶりの改正となります。
個人情報とは、特定個人を鑑別できる情報の全てを指します。
この改正によって、個人情報保護の範囲が明確化されました。
中でも病歴など特に慎重な取り扱いが求められる機微な個人情報を
「要配慮個人情報」とすることになりました。
◇個人情報保護法の概要
義務を負う対象者 |
個人情報取扱事業者(取り扱う個人情報の数に関わらず 個人情報データベースなどを事業の用に供しているもの) |
罰則 | ある |
主な規定 | ・利用目的の特定と利用目的による制限 ・取得に際しての利用目的の通知書 ・データ内容の正確性の確保など ・情報漏れ防止のための安全管理措置や業委託先・従業員の管理 ・第三者提供の禁止 ・本人の求めに応じての公表など・開示・訂正など・利用停止など ・苦情の処理体制の整備 |
要配慮個人情報 | ・原則、本人の同意を得て取得 ・本人の同意を得ない第三者提供の特例(オプトアウト)から除外 ・法令に基づく場合や、人の生命・身体・財産保護のために必要であって 本人の同意を得ることが困難な場合には、同意なしに取得可能 |
また、医療関連分野に関する個人情報の保護については
次のガイダンスが発表されています。
・医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取り扱いのためのガイダンス
・健康保険組合等における個人情報の適切な取り扱いのためのガイダンス
・国民健康保険保険組合における個人情報の適切な取り扱いのためのガイダンス
・国民健康保険団体連合会等における個人情報の適切な取り扱いのためガイダンス
◇医療関連分野における個人情報の取り扱い
義務を負う対象者 | 個人情報取扱事業者 |
罰則 | ガイダンスのため未設定 |
主な規定 |
医療・介護関係者や健保組合などが個人情報を適正に取り扱うよう、 遵守すべき事項や遵守することが望ましい事項を具体的に示している |
個人情報保護と安全配慮義務
安全配慮義務を履行するために、個人の健康情報を提供する必要がある場合
産業保健スタッフ(産業医、保健師など)から非医療職への情報提供については、
本人の同意を得る、また誤解や偏見が生じないよう情報を加工することが
望ましいと言われています。
しかし、緊急対応が必要な場合など、
状況によっては原則を遵守できないこともあります。
ケース次第で、顧客や同僚の安全が優先されることもありえます。
しかし、その際にも本人に不利益が生じないよう配慮すること、
関係者が責任や立場だけで性急に判断しないことが大切です。
個人情報保護と安全配慮義務の両立のポイント
本人からの同意取得の努力をした上で、それでも同意が得られない場合は
「重要性・緊急性」と「プライバシーの保護」のバランスを考慮し、
必要最低限の情報を必要最低限の人のみ提供することを心がけましょう。
プライバシー配慮の注意点
従業員のメンタルヘルスをはじめとした、健康に関する情報を取り扱う場合には
関係者は様々な角度から注意を払う必要があります。
従業員のプライバシーにかかわる情報については、法令に則り、
その収集及び管理、取り扱いやルールの取り決めについて
次のような注意や配慮が必要となります。
◇健康情報の収集
・健康情報の収集については、その収集目的が明確に特定されていることが
大前提となる。これは個人情報保護法によって定められている。
・健康情報を収集する際は、原則本人からの同意を得る必要がある。
◇情報の管理
・健康情報の管理については、
そうした医療職が責任を持って一元管理するのが望ましいとされている。
医療職がいない場合は、情報を扱う者(衛生管理者など)を就業規則に定める。
これにより、情報の正確な理解と厳格な守秘義務による管理が可能という
利点がある。
・情報提供時は、必要に応じて加工して提供することが理想とされる。
◇情報漏洩の防止
・事業者は健康情報の漏洩を防止するため、物理的、技術的、人的、組織的な
観点から厳重に安全管理を行わなければならない。
・その必要性を理解させるための教育研修の実施も必要。
◇取り扱い方法のルール化
・関係者が健康情報を適正に取り扱うために、
事業者は衛生委員会などを利用して一定のルールを決めておく必要がある。
◇法令・規則の遵守
・健康情報をはじめとした個人情報については、
本人のプライバシー保護を目的とした様々な法令や規則、指針などを
遵守しなければならない。
◇プライバシーマーク制度
・プライバシーマークの認定を受けた事業者は、
自主的により高い保護レベルの個人情報保護マネジメントシステムを
確率・運用していることになる。
以上が、プライバシー配慮の注意点となります。
是非参考にしてみてください。
まとめ
◎健康情報の管理において、プライバシーの配慮を求められる関係者に、
同僚の従業員は含まれる。
◎医師が守秘義務を遵守するための法令として、刑法がある。
◎健康情報をはじめとした個人情報を取り扱うために制定された、
個人情報保護法の対象となる者は、個人情報保護取扱事業者と呼ばれる。
◎健康情報の管理は医師や看護師といった医療職が一元管理することが重要であり、
このことは法律上では決められておらず、ガイダンスで望ましいとされている。
ここまでお読みくださり、ありがとうございました!
次回もお楽しみに…♪